今日も岩内深層水の農業利用の可能性を探りに、真夏の仁木町に行ってきました。
余市との境に近い仁木町で、トマト温室を14棟営んでおられる上原拓矢さんの農園、UTふぁーむにお邪魔しました。取材には、拓矢さんの父上と若い奥様が同席してくださり、自家製のトマトジュースをいただきながら、いろいろとお話ししてきました。トマトの酸味と甘みのバランスがとても良く、濃厚で美味しいジュースでした。
拓矢さん、農業はいつ頃から始めたんですか?
「就農して5年ほどです。ここも借りている土地で5反ですかね、ずっとミニトマトを中心に作っていますけど、農協を通さずに独自のルートで出荷してるんです。近隣のマーケットだったり、この農園で売ったり、仲買を通して東京のスーパーや弁当屋さんに行ってます。あと、収穫までの時間が短かくて済むんで、十六ささげも作ってます。」
写真は奥さん手作りのトマト販売のチラシ。農園のロゴが可愛いです。
岩内深層水はどういうきっかけで使われたのですか?
「うちでは灌水と液肥とそれから葉面散布と、いろいろな使い方をしています。例えば、灌水には深層水の高ミネラル脱塩水を混ぜていますが、殆どの農家が2日に一回とか、間引いた灌水でトマトに負荷をかけて甘くするという方法を採ってるんですよ。でも自分が感じるのは、そういう負荷をかけるとトマトの皮が硬くなったり、みずみずしさが失われると思うんですよね。だから他ではやっていない方法ですけど、毎日灌水をするんですよ。そっちの方が絶対に美味しいトマトになると思います。そう、それから一度、潅水に高ミネラル脱塩水を混ぜなかったことがあって、そのときにぐっと味が落ちたんですね。それでやはり海のミネラルが深く味に関係していることを実感できましたね。」
お父さんは手伝ってるだけとおっしゃってますけれど、お父さんの教えですよね。お父さん、一言お願いしても良いですか?
「いや、私は酪農の経験を経て、農業の会社員になって、そこで農業のことを色々学びましたね。今は次男と三男が農業を始めて、私が三男の手伝い、私の妻が次男の手伝いをしてます。2人ともミニトマト農家ですね。農業のことですね、大事なのは菌とかミネラルの話ですけど、菌の事は、北海道大学総合微生物研究所の増田先生から色々学んで、EM菌をずっと葉面散布に使ってます。海のミネラルのことは、経験から色々学んだり、話に聞いたりして自分の中で確かなものに育っていきましたね。深層水を使っているのも海のミネラルと農業の繋がりに確信があるからですね。宮城県の友人が大震災で被災したんですけど、田んぼが潮を浴びてしまって、もう駄目だと言って落胆してたんですが、次の年にその同じ田んぼで前よりもずっと美味しいお米ができたって言ってて、それは海のミネラルのおかげだよって確信しましたね。
海のミネラルと農業の話は、まだまだたくさんありますよ。例えば牛糞を生堆肥として畑に撒いて、化学薬品を使わなければそれが有機栽培だと勘違いしてる人が大勢いるけど、実際はそういう肥料では作物に硝酸体窒素が多くなって、美味しくないし、食べた人の口が腫れたりするんですね。そういうとき、畑に昆布を漉き込んだりすると美味しい作物になるんですよ。昔の農家は牛糞を堆肥にしていたんだけど、皆で自分が作った野菜を持ち寄って食べたことがあって、魚かすを撒いて育てたジャガイモをみんなが砂糖で炊いたんだろうと勘違いしたぐらい、甘味が出るんですね。先日NHKで見たんですけれど北欧の農業で、痩せたわずかな土壌しかない土地に現地の農家が毎年海藻を敷き詰めていたんですけれど、それも大いに納得できましたね。本当に、日本でも、海に面した農地とか、海の潮風からでも海の恩恵を受けてるんですよ。魚や昆布、それからウニの殻なんか、海の生き物を工夫して農業に使うと作物の味がぐっと良くなる。それから栄養価もそうです。最近、ほうれん草の栄養価が昔に比べると10分の1に落ちてるって言ってましたけど、やはりミネラル不足でアミノ酸が低下しているせいだと思いますね。今そうしたことまで気にしてやっている農家は少ないと思いますよ。」
なるほどですね。拓矢さん、お父さんの話からすると、肥料にもこだわっておられそうですね?
「うちでは液肥を一から作ってますよ。知り合いからもらった魚、鮭のアラなんかを持ってきて、深層水の原水やクエン酸なんかを混ぜて、液肥にして発酵させてます。卵の殻なんかも入れてますね。父がよく言いますが、くさやの干物の要領だよって。実際そんな臭いがしますね。あと、殺菌剤の替りに普通の安い穀物酢を使ったりしてますよ。」
いやいや、山と海の水と栄養の循環のことは知ってはいましたが、海と農地を繋ぐ工夫がそれほど大事で、これからの農業にとって大切ではないかって、それを実践されているところがすごい、海がもたらす生命力を感じ取ることができました。ありがとうございます。そこに岩内の海洋深層水がお役に立ててるというのも本当にいいお話が聞けました。
それでは…と岩内に帰ろうとしたところ、
「次男の畑もすぐ近くなんで、ちょっと寄ってきますか。」
とお父さまと車で数分のところにあるミニトマトのハウスが並ぶ農地へ。
先ほどの拓矢さんのお兄さん、次男の上原渉さんが出迎えてくださいました。
「僕も農協を通さず、自分で販路を開拓しています。今、弟の丸いミニトマトと違って、ちょっと細長い品種を作っているんですが、今年はこの品種を求める声が高まって、作付けの割合を増やしたんですよ。品種によってすごく性質が違うのを感じてますね。神経を使いますよ。」
丸くても細長くてもミニトマトはミニトマト、そう思ってましたが、品種によって水とか液肥とか、それぞれ好きなものが違うんですね。もうそれ以上伺っても訳がわからなくなるので、この辺で退散します。
しかしすごい暑さですね。ひと雨ほしいですよね。
今日は本当にありがとうございました。
取材日:令和3年8月3日(火曜日) 午前10時~