■海水から真水をつくる
中近東やアフリカのような砂漠の国々、あるいは日本各地の離島では、古くから海水中の塩分を取り除いて淡水とし、飲料水、農業用水、工業用水として使ってきました。
<海水脱塩の歴史>
- 1930年代
- 石油が発見されて以来、中近東では蒸発法を使った海水淡水化が積極的に行われる。
- 1952年
- イランにイオン交換樹脂膜を使った電気透析法による淡水化装置が設置される。
- 1958~60年頃
- 非対称膜を使った逆浸透法による海水淡水化も、省エネルギー技術としてしだいに実用化される。
- 1962年
- 米国カリフォルニア州に3,800m³/日の能力を持った多段フラッシュ蒸発法(MSF)による最初の大型プラントが設置される。
- 1960~70年代
- 法に基づく数多くの海水淡水化プラントが中近東諸国へ納入される。
■逆浸透膜法の原理
浸透膜で淡水と海水を隔てると、浸透圧によって水が膜を通り海水の方に移動しますが、
海水に浸透圧よりも高い圧力を加えると、海水から淡水の方に水が移動し、脱塩水を得ることができるのです。
簡易な逆浸透膜法というのは、淡水を使わず、浸透膜に圧力をかけながら
深層水を流し、膜から脱塩水を絞り出すようにろ過する方法です。
現在は、中空繊維を束ねて入れた管に圧力をかけながら深層水を注入し、
中空繊維の側面から中に入る脱塩水と中空繊維の外に残る濃縮水とに分離する方法が一般的です。
つまり浸透膜(中空繊維の側面)にあいている微細な穴から
溶媒である水(H²O)だけが中に入り込み、塩分などの溶質は濃縮水の方にこし取られるのです。
■逆浸透膜法の利用例
水の確保を海水淡水化に頼っている原子力発電所では、最近は蒸発法に代わって、逆浸透膜法を採用するケースが目立っています。
現在の船には、漁船からクイーンエリザベス号などの豪華客船や潜水艦などの軍艦に至るまで、
逆浸透膜法海水淡水化装置(造水機)が積み込まれています。これによって水補給のための寄港が必要なくなり、船足を格段に速めました。
■脱塩に適している深層水
脱塩装置に表層水をそのまま使うと、細菌や生物由来の有機物など懸濁物といわれるものが大量に膜にひっかかり、
膜はすぐに使い物にならなくなります。脱塩するには何度も沈澱・ろ過槽を経由してから膜を通さねばなりません。
深層水は表層水に比べて格段に清浄であるため、このような前処理がいらず非常に効率良く脱塩ができます。